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ごあいさつ

理事長のご挨拶

【 過去の理事長挨拶 】

みたび迎えた3.11に

   前回このごあいさつを更新してから、丸1年が経ってしまいました。日常の雑事にかまけていたせいもありますが、あの震災から丸2年が経ってもなお、当地の状況は1年前と大きく変わっていないばかりか、取り壊される建物の数はさらに増加しており、楽観的な見通しを書くことが憚かられたからです。


   それでもこの1年で、原発事故直後は明らかなデマも含め悲観的な情報ばかりが伝えられる傾向にあったことについては、メディアにより一定の反省がなされたのか、以前に比べればずいぶん客観的な報道がなされるようになったように感じられます。
   また、県民健康管理調査の結果、平成23年3月11日から4ヶ月間における県中地域の外部被ばく線量は、調査対象の99.9%が3mSv未満でうち 51.2%は1mSv未満であるという推計値が公表されたほか、福島県の子どもを対象に実施した甲状腺検査と他3県で行った同様の検査の結果を比較したところ、少なくとも現時点では原発事故による甲状腺への健康影響は認められないことが報じられるなど、地域住民が漠然と抱いていた不安を和らげる情報が少しずつ公表され始めています。遅れていた住宅地での除染作業も、徐々に目に見える形で進むようになってきました。


   放射線に対する不安から郡山を離れ、県外に自主避難したままの方々は、未だ少なくありません。放射線に汚染された廃棄物の中間貯蔵施設の設置場所すら決まらず、原発災害の完全収束が見えてこない現状では、これらの方々が下した「県外で暮らす」という重い決断が簡単に覆ることはないでしょう。当地が居住制限 地域や計画的避難地域には指定されていないという事実でさえ、東京電力の閉鎖的企業体質、政府や県の縦割り行政、それらの結果として生まれる情報隠蔽をさんざん見せつけられた後では、とうてい受け容れがたいことなのでしょう。
   しかしその一方で、当地には、「ふるさとに残り、ふるさとで暮らす」という、やはり重い決断をした多くの方々がいます。そして、不安は完全に消えない中でも自分のできることに精一杯取り組み、ふるさとの未来を切り開こうと努力している方々がいます。ひとつ例を挙げれば、平成23年12月23日、郡山市の小児科医・菊池信太郎氏と地元スーパー・ヨークベニマルの大高善興社長が中心となり、屋外では存分に遊ぶことのできない子どもたちのためにオープンした東北最大の屋内遊び場「ペップキッズこおりやま」の入館者数は、今年3月2日で40万人を突破し、地元で暮らす子どもたちの心身の発達を力強くサポートしています。


   低線量の放射線が人体に及ぼす影響が科学的に確かめられていない現状において、ふるさとを離れる、あるいはふるさとに残る選択の、どちらが正しくてどちらが正しくないということは、誰にも決めることができません。
   しかし、ここ郡山に生まれ育った一人として私は、郡山市とそこで暮らす人たちの地道な取り組みが・・・それはまだ雲の隙間から差し始めた薄日に過ぎないかもしれませんが...やがて燦々たる春の光に変わり、ふるさとを離れた人々の心を覆う厚い上着を脱がせるようになることを願っています。
    私たち湯浅報恩会は、特段これといった派手なパフォーマンスはできませんが、安心できる暮らしのためには欠くことのできない医療・福祉というインフラの一端を担う地元企業として、ここで生活する人々、ここに戻ることを考えている人々の不安に真摯に寄り添い、そのかけがえのない健康と生命(いのち)を守るため全力を尽くそうと思います。

(2013.3.11 記)

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