寿泉堂綜合病院

救急告示病院 地域医療支援病院 基幹型臨床研修病院
日本医療機能評価機構認定病院

法人のご案内

赤ちゃんの
頭のかたち外来

はじめに

当院では2022年1月から「頭蓋骨縫合早期癒合症」の
スクリーニングと「位置性頭蓋変形」の診断と治療を目的に、
赤ちゃんの頭のかたち外来を始めました。

赤ちゃん(新生児)の頭の骨は6種類8個の骨から構成されています。それぞれの骨は線維性組織によって緩く結合(頭蓋骨縫合)しており、お母さんの産道を通過するために容易に変形しやすいようになっています。その後の乳児期も急速な脳の成長に対応するため、縫合部は成人のように強固に癒合していません。そのため、お母さんのお腹の中での様々な要因(骨盤位または横位などの胎位異常や多胎妊娠など)や、生まれたあとにいつも同じ方向を向いて寝ていること(向き癖)によって、頭の形がゆがんだり、後頭部が左右非対称になったりすることがあります。これを「位置性頭蓋変形」と呼びます。「位置性頭蓋変形」は病気ではなく、脳機能の発達に影響が出ることは基本的にはありません。変形の程度が軽い場合は、赤ちゃんが自分で寝返りをうつようになると自然に改善することが期待できますし、寝返りをする前であれば、頭の向きを変えてあげたり、呼吸状態に注意しながらのうつぶせ寝の時間(タミータイム)を増やしたりすることで、頭のかたちの改善が見込めることもあります。

しかしながら、変形が強くなった場合には、耳やおでこ、目、頬、あごの位置もずれることがあり、寝かせ方の工夫だけでは十分には治らないことがあります。こうした場合は、ヘルメットを使用した矯正治療が効果的であることが報告され、海外では1990年代から、日本では2012年から保険外の診療として行われるようになってきました。
一方、まれ(2000~3000出生に1人)に、頭蓋骨縫合の1つ、もしくは複数が、胎児期から1歳以前の早期に骨性癒合する「頭蓋骨縫合早期癒合症」という疾患でも頭の変形をきたすことがあります。

頭蓋健診について

頭蓋縫合早期癒合症の治療経験が豊富な脳神経外科専門医・小児脳神経外科認定医が診断を行っています。

当院のスタッフは日本頭蓋健診治療研究会に定期的に参加し、知識と技術のアップデートを行っています。
ヘルメット治療は早期に開始することが変形の改善につながります。首がすわった頃から生後5か月までに受診されることをお勧めします。
なお当院は200 床以上の地域医療支援病院のため、紹介状なしで来院されますと、7,000 円の選定療養費がかかってしまいます。できるだけかかりつけの小児科の先生を通じて紹介状を持参されることをお勧めします。
赤ちゃんの頭のかたちについて心配な方は遠慮なくお問い合わせください。

赤ちゃんの頭の
ゆがみについて

赤ちゃんの頭がゆがむ原因は、大きく分けて2つあります。

骨が早期にくっついてしまう「頭蓋縫合早期癒合症」に代表される病気によってゆがんでしまう「病的頭蓋変形」と、子宮内、お産時、むきぐせなど外部からの圧力を受けてゆがんでしまう「位置的頭蓋変形」があります。
まずは赤ちゃんの頭のかたちのゆがみが病気によるものか、病気でないものか適切な頭蓋健診を受けることが必要です。

位置的頭蓋変形について

お母さんの子宮内での姿勢、吸引分娩などの分娩時の影響や、生後眠るときの頭の向きなど、外力によって生じる赤ちゃんの頭のゆがみです。生まれてすぐの赤ちゃんは自分で頭の向きを変えることができません。また新生児では骨も薄く、頭蓋骨縫合の緩やかに結合しているだけですので、同じ方向ばかり向いて寝ること(向き癖)によって、自身の頭の重さで下になった骨が変形します。寝相のよい子といわれる赤ちゃんほど両側性の後頭部の扁平化、いわゆる絶壁頭が多いことはしばしば経験するところです。一般的に首がすわった後に頭の位置を動かせる時期になると改善傾向がみられてきます。位置性頭蓋変形については形状に応じて「斜頭症」「短頭症」「長頭症」の3つに分けられます。

斜頭症

斜頭症(しゃとうしょう)とは、頭蓋の左右一方が斜めにゆがんで、左右非対称になっている状態です。前頭部のゆがみと後頭部のゆがみがありますが、向き癖による斜頭は、多くの場合後頭部に生じます。ゆがみが進行すると耳の位置や顔面が左右非対称になることもあります。心配な場合には、かかりつけの小児科の先生にご相談いただくか、脳神経外科や頭蓋形成に精通した形成外科の専門医療機関への受診をお勧めします。

短頭症(絶壁頭)

短頭症(たんとうしょう)とは、頭の前後系が横径に比較して短い状態です。後頭部の丸みがなくなった後頭部扁平を一般的には絶壁頭と呼びます。主な原因は、赤ちゃんが行儀よく仰向けに寝ることで後頭部に均等に圧力が加わることによるとさ れています。

長頭症

長頭症(ちょうとうしょう)とは、頭の前後径が横径に比較して長い状態のことをいいます。

寝かせる向きの工夫

できるだけ同じ方向を向かせないように配慮することで、片方の後頭部に圧力が長時間持続して加わらないようにします。生後1~2か月までは、軽度の斜頭症による向き癖ならば、意図的に反対側を向かせてみましょう。お母さんと赤ちゃんの寝る位置はどうでしょうか?斜頭症では右後頭部が平らな赤ちゃんが多いことが知られています。多くのお母さんは右利きですから、寝るときにはお母さんが右手でトントンと寝かせているのではないでしょうか?そうすると赤ちゃんはお母さんの方を向いている、すなわち右向きに寝ていることになります。お母さんと赤ちゃんの寝る位置を入れ替える、ベビーベッドなどでは向き癖と反対側にテレビや家族の声がして、楽しそうな方向を向かせるような工夫も効果があるかもしれません。

タミータイム

タミータイムは「うつ伏せ練習(遊び)」「腹ばい練習(遊び)」という言葉で頚定(首のすわり)獲得を促す方法として用いられていますが、タミータイムを一定時間実施することによって後頭部の扁平化を予防し、肩甲骨上部の発達を促して運動のマイルストーン達成を促進できるとされています。
分娩施設から自宅に戻ったら、1日に2,3回、3〜5分くらいからはじめてください。おむつを替えた後、目が覚めた直後に行いましょう。最初は「トトロとメイちゃんが大木の中で最初に出会ったシーン」のように、お母さんの胸やおなかの上で、うつぶせで保持しましょう。頭を自分で動かせない時期は、うつぶせ寝で鼻と口が埋まって窒息する危険があるので、ふかふかの服や寝具の上でのうつぶせ寝は避けるべきです。なお頚定前の赤ちゃんにうつぶせのまま寝かせることは乳児突然死症候群のリスク因子なので厳禁です。
赤ちゃんが喜んで行うようであれば、徐々に延長して朝晩15分~30分ずつのタミータイムを目指しましょう。

ヘルメット治療

あたまのゆがみが重度の場合は、
上記のような方法での改善は難しく、このような場合には、
頭蓋矯正ヘルメット治療が有効であることがわかっています。

  • ●矯正ヘルメット治療では、変形している頭蓋骨に締め付けるような圧力をかけるものではありません。
  • ●治療のコンセプトは、頭蓋骨が出ているところを、それ以上突出しないようにして成長を待機させ、扁平な部分の成長を促すというものです。したがって頭蓋骨が柔らかく、一定の拡大が見込まれる時期に限られます。
  • ●当院で採用しているヘルメットは約130g と軽量なものですが、赤ちゃんにとっては負荷がかかりますので、頚定後の生後3か月~ 6か月で治療を開始し、約6~7か月間ヘルメットを装着します。
  • ●2024 年5 月31 日現在の当院の経験では、装着時月齢は平均5 か月14 日(3 か月8 日~ 7 か月1 日)、終了時月齢は1 歳0 か月9 日(0か月11日~ 1歳4か月)で装着期間は平均7か月でした。
  • ●ヘルメット治療では「治療開始後のサポート」が非常に重要です。赤ちゃん一人ひとりの成長や治療の進み具合を見極めるために、約4週間毎に通院していただき、ヘルメット内部のクッションの厚さを調節します。
  • ●治療修了(卒業)は、
    ①親御さんが満足のいくあたまの形になったとき
    ②赤ちゃんに自我が出てきてヘルメット装着を嫌がったり、自分で外すようになったりしたとき
    ③ヘルメットが物理的に入らなくなった(サイズアウト)したとき
    ※多くの場合②をもって終了となります。

頭蓋矯正
ヘルメット

最新3Dプリンタで作成するオーダーメイドのヘルメット

当院では株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー製の日本製ヘルメットを用いて治療しています。最新3Dプリンタで作成された、赤ちゃん一人ひとりに合わせたオーダーメイドのヘルメットです。日本人の骨格や日本の気候を踏まえて設計されています。

ヘルメット作成のための頭部スキャンや、毎月の診察時もジャパン・メディカル・カンパニーのスタッフが同席し、安心安全の医療サービスの提供をしています。なお現在使用しているクルムフィットの開発には、当院担当医師も参画していました。

治療費について
病的変形かどうかの診断までは保険診療で行います。 ヘルメット治療は自費診療です。自費診療分は、ヘルメット作成費と毎月の診察料、張替えクッション代、3D スキャン検査代を合わせ、550,000 円(税込み)です。
矯正ヘルメット治療の副作用
約半数の赤ちゃんでは頭皮の発赤や湿疹などが生じます。お近くの小児科や皮膚科で軟膏を処方していただいたり、時々外して汗を拭いたりすることで対応していただいています。

診療受付

初診の方
毎週 金曜日
ヘルメット治療
隔週 水曜日

担当医師の紹介

小児脳神経外科

佐久間 潤(寿泉堂綜合病院長)

“Profile”

略 歴

平成02年 3月 福島県立医科大学医学部卒業
平成02年 4月 福島県立医科大学脳神経外科
平成06年 3月 福島県立医科大学大学院博士課程修了
平成06年 6月 ニューヨーク大学脳神経外科リサーチフェロー
平成08年 6月 福島県立医科大学脳神経外科
平成08年

11月

枡記念病院脳神経外科
平成09年 11月 総合南東北病院脳神経外科
平成10年 11月 横浜新都市脳神経外科病院
平成11年 4月 福島県立医科大学脳神経外科助手
平成19年 5月 福島県立医科大学脳神経外科講師
平成21年 4月 福島県立医科大学脳神経外科准教授
平成28年 11月 福島県立医科大学脳神経外科教授
令和03年 7月 寿泉堂綜合病院長
(並びに公益財団法人湯浅報恩会副理事長)
ヘルメット治療について相談したい方は、当院が導入しているヘルメット「Qurum Fit」のメーカーが運営する「赤ちゃんの頭のかたち相談室」に無料でご相談いただけます。

Webからは24時間受付中