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ごあいさつ

理事長のご挨拶

桜花爛漫の侯に

 各地から花のたよりが届く季節となりました。今年の桜前線の北上はとりわけ速く、福島県内でも観測史上最速で開花を記録しているところが多いようです。私が子どもだったころ、郡山市内の桜はゴールデンウィークが明けるころ満開になっていた記憶があるのですが、今年は開成山公園の桜が3月末日の時点で5分咲きを超え、日中の気温が上がる明日にも満開になろうとしています。
 思い返せば、2020年1月に国内で新型コロナウイルスの初感染が確認されてからの3年間は、お花見どころではない状況が続きましたし、満開の桜を見ても、心象を反映してか、薄紅色が薄墨色であるように感じられて仕方がありませんでした。でも今年は、まだまだ楽観は許されないとは思いながら、久しぶりに心浮き立っている自分がいます。
 開成山公園を彩る桜の多くは、安積開拓・安積疏水開さく事業を進めるために郡山の商人らが結成した「開成社」により、明治11年(1878年)に植えられたと伝わります。安積疏水を中心とする複数の文化財が「未来を拓いた『一本の水路』」として日本遺産に認定された際に行われた調査によると、園内で最も幹周りの太い(約4.4m)染井吉野(ソメイヨシノ)の樹齢は140年を超え、現存する日本最古の染井吉野であることが判ったそうです。
 山口県出身の初代・湯浅為之進が郡山駅前に寿泉堂綜合病院の前身となる湯浅医院を開院したのが明治20年(1887年)で、その後明治22年(1889年)には1県に1校整備された福島県立尋常中学校(現・安積高校)の校医に選ばれましたから、きっと為之進も郡山駅前から中学校のある桑野村へと通う道すがら、開成山に咲き誇る桜を愛でたに違いありません(独身時代の為之進は、夜になって話し相手がほしくなると安積中学校の寄宿舎を訪ね、学生たちと相撲を取っていたそうですから、提灯に照らされる夜桜も観たことでしょう)。
 この春は、そんな、自分が生まれるよりはるか昔のことに思いを馳せつつ、羽目を外しすぎない程度に、散りゆく花を惜しみたいと考えています。    
 
 とは言え、急速に進行する少子化と人口減少、患者さんの意識と受療行動の変化、諸物価の高騰、病院の機能分担と集約へ向けた政策の強化等により、医療経営を取り巻く環境は日々厳しさを増すばかりです。私たち湯浅報恩会は、今後も地域に選ばれ、医療を通じて地域に貢献していくため、創業時から継承されてきた「患者さん第一」の理念を堅持しながら、決別すべき過去とは決別し、経営革新・組織改革に取り組んでいく所存です。この夏には、郡山駅前一丁目第二地区(旧寿泉堂綜合病院跡地)の再開発工事に着手し、郡山駅前地区の活性化へとつなげられるよう取り組んでいく予定ですので、皆さまからご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

(2023.3.31 記)

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理事長就任挨拶

6月10日に急逝いたしました故・湯浅伸郎に代わりまして、この度、7月28日付で、財団法人湯浅報恩会の理事長に就任いたしました湯浅大郎です。私自身は医師ではありませんが、当法人に勤務して23年目に入りました。その大半は病院の経営管理にたずさわってまいりましたが、まだまだ知識、経験、人間性のいずれにおいても到らない点が多々あることは、本人が一番自覚しています。しかし、今回、図らずも理事長という重責を担うこととなった以上は、すべての職員と力をあわせ、地域医療の充実のために全力を尽くす覚悟です。以下では、今、私が考えている主な基本方針を説明して、ご挨拶に代えさせていただきます。今後とも当法人に、皆様からのお力添えと忌憚のないご意見を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

1.理念の堅持

明治20年、初代・湯浅為之進(ためのしん)が郡山駅前に小さな医院を開設したときから掲げてきた「患者さん第一」の理念は、私たち湯浅報恩会の職員にとって、すべての価値判断や行動の根幹をなす拠り所です。前理事長が折りに触れて話していた、「『患者さんの喜びは私たちの喜び』という精神こそ、医療人の原点である」という言葉も、同じことを言い表したものでしょうし、私自身は、「患者さん第一」とは、簡単に言えば患者さんを自分の肉親であると思って接することである、と考えています。  今でこそ、似たような基本理念をうたう医療機関は少なくありませんが、私たちには、一世紀以上にわたってこの理念にこだわり続けてきたという、秘めたプライドがあります。人口動態や疾病構造の変容を受けてわが国の社会保障政策が目まぐるしく変転する中、医療機関には時代の要請に的確に対応していく柔軟性が求められています。しかし「患者さん第一」という理念は、時代がどんなに変わろうとも決して変わることはないでしょうし、変えてはいけないものであると確信しています。

2.前理事長の遺志の継承

現在、寿泉堂綜合病院西側の区画では、郡山駅前の再開発計画と連動する形で新・寿泉堂綜合病院の建設工事が進められています。前理事長の悲願でもあった新病院建設計画は、当法人にとって「第二の創業」とも位置付けられる重要な事業であり、新病院の運営をしっかりと軌道に乗せていくことこそ、私に託された最大の使命であると考えています。新病院では、従来の診療科の枠組みを超えた「血管病センター」をはじめ、3つのセンターを核とする高度な急性期医療の提供体制を整える計画ですが、それだけに止まらず、病院の上層階に約80戸のマンションが併設されるという特徴を活かし、高齢者世帯などが「安心して暮らせるまちづくり」のひとつのモデルを呈示していきたいとも考えています。そのためにも、前理事長が最も力を注いできたマンパワーの充実、とりわけ医師の増員には、引き続き全力で取り組みます。マンパワー充実は綜合病院だけでなく、寿泉堂香久山病院の回復期・慢性期医療、寿泉堂クリニックの予防医学と透析医療、さらには在宅医療、介護・福祉領域まで、当法人が有する包括的医療提供体制全体のレベルアップと、他医療機関との連携・役割分担の推進を視野に入れながら進めてまいります。

3.企業体としての存続と地域貢献

湯浅報恩会には現在、パート、派遣職員も含めると約880人の職員が勤務しています。これに関連法人を加えた職員数は優に1.000人を超えますから、職員の家族まで含めるとおそらく3.000人以上の方々が、生計の基盤を当法人に置いていると考えられます。私には、地場の企業体としては決して小さくないこの法人を将来にわたり存続させ、職員の雇用を安定的に確保する義務も課せられています。言うまでもないことですが、「患者さん第一」を実践し、患者さんの満足度を高めるためには、職員自身もまた、高い満足度を持って仕事に従事していることが必要です。職員に心のゆとりがなくては、患者さんに笑顔で接することができるはずはありません。私は、職員の一人ひとりがプロフェッショナルであるというプライドを持ち、それぞれの役割をきっちりと果たすことによって私たちの使命を果たしていけるような組織風土づくりにも力を入れていくつもりです。そのために、これも前理事長が手がけようとしていたことですが、職場・職種・職制間のコミュニケーションの円滑化、現場への責任と権限の委譲、経営陣の世代交代も含めた組織刷新に、順次着手していく所存です。また、厳しい経済情勢の中ではありますが、初代以来、当法人が力を注いできた文化・芸術活動への支援などを通じても、地域の発展に貢献していくことができれば幸いです。

(2009.8. 1記)