ごあいさつ
理事長のご挨拶
【 過去の理事長挨拶 】
理念を見直しました
日本国民が期待を持って待ち望んでいた新しい元号が、「令和」と発表されました。
「平成」の30年間は、その字面と裏腹に天変地異と呼ぶべき災害が相次いで発生し、今もなお各地に暗い影を落としています。5月から始まる「令和」の御代が、その出典の通り、紅白の梅が競って薫り立つように穏やかな時代となることを願ってやみません。
元号が変わるからというわけではなかったのですが、公益財団法人湯浅報恩会は、本年2月1日に法人運営の根幹をなす「理念」の見直しを行いました。明治20年8月、初代院長が郡山の駅前に小さな診療所を開設したときから唱え続けてきた「患者第一」という言葉は、130年を超えて当法人の職員の価値判断や行動の基準であり続けてきました。平成21年7月、私が前理事長の逝去に伴い理事長に就任した際にも基本方針の第一には「理念の堅持」を掲げ、「『患者さん第一』という理念は、時代がどんなに変わろうとも決して変わることはないでしょうし、変えてはいけないものであると確信しています」と記しました。
前理事長の時代には、「私たち湯浅報恩会は、『患者さん第一』を基本とし、この地における近代医療の先駆けとしての誇りと責任をもって、地域医療の向上のため貢献します」という理念・使命の宣言文(ミッションステートメント)を制定し、10年近く院内随所に掲示してきました。これはこれで格調も高くそれなりに定着していたのですが、一部の職員からは「長すぎて覚えられない」、「なんとなく上から目線で偉そうに感じる」、「歴史を誇るよりも未来を指向すべき」といった遠慮の無い(しかし、ごもっともな)意見が聞こえてきていました。寿泉堂綜合病院が病院機能評価更新のための受審を迎えるタイミングだったこともあり、経営会議のメンバーで協議を重ね、理念をより分かりやすい表現へ変更することが決定されました。
2月1日に改定し掲示し直した理念は、以下の通りです。
「患者さん第一」 心のかよう医療を
・・・個人的に、今度はシンプルすぎるような気がしないでもないですが、改定からふた月が経った今では、職員がいつでもそらんじることができるために、理念はこのくらいシンプルな方が良いと思えてきたところです。
「患者さん第一」の意味については、これまで「患者さんを自分の肉親であると思って接すること」、「患者さんの痛みを自分の痛みと感じ、患者さんの喜びを自分の喜びと感じること」などと説明されてきましたが、おそらく絶対の正解は存在せず、ひとり一人の職員が医療人として成長していく中でそれぞれの答えを見つけていくことがたいせつなのだと思います。
医療経営を取り巻く環境は日々厳しさを増し続けており、国が進めている「地域医療構想」に基づく地域医療体制の再編が加速されると、約8,000あるわが国の病院は「多くても今の半分の4,000で成り立つ」(日本病院会・相澤孝夫会長)と言われています。私たちのような地域密着型の病院には、医療を提供する側の自己満足ではない、「身の丈に合った」、「効率的な」医療を実践することが強く求められています。
しかし、効率が最優先となってしまった病院が生き残れるとは、私にはどうしても思えません。病院の再編と淘汰が避けられない時代だからこそ、「患者さん第一 心のかよう医療を」という理念が私たちの行く手を照らしてくれるものと信じています。
(2019.4. 1 記)
【 理事長挨拶アーカイブ 】
- 桜花爛漫の侯に (2023.3.31)
- 不安な日々の中で (2022.4. 1)
- 地域医療を守るための総力戦 (2021.3.11)
- 春愁(しゅんしゅう)の中で (2020.4. 1)
- 理念を見直しました (2019.4. 1)
- ちょっとだけ、大河ドラマふう (2018.4. 2)
- 創立130周年を迎え、私たちがすべきこと (2017.4. 4)
- 鎮魂と再生と (2016.3.11)
- 「人」から始まる復興 (2015.3.11)
- 福島の復興のために私たちができること・すべきこと (2014.3.13)
- みたび迎えた3.11に (2013.3.11)
- ふたたび3.11を迎えて (2012.3.12)
- 思いやりのキャッチボール (2011.9. 3)
- 地域の復興のために (2011.4. 7)
- 「報恩」ということについて (2010.6.15)
- 病院とホスピタリティ (2010.2.15)