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ごあいさつ

理事長のご挨拶

【 過去の理事長挨拶 】

「報恩」ということについて

 明治20年、小さな診療所からスタートした寿泉堂病院は、医療面のみでなく徐々に組織としての充実も図ってきました。二代目院長・湯浅大太郎は、医療の公益性を推進する見地から民法第34条に基づく「財団法人湯浅報恩会」を設立し、今日へと直接つながる経営基盤を整えました。

 さて、この「湯浅報恩会」という名称なのですが、実は私自身は、古色蒼然としている感じがして、ピンとこないというのが本当のところでした。辞書を引く と、「報恩」には文字通り「恩に報いること」という意味があるほか、「仏・祖師などの恩に感じて仏事・布施などを行うこと」とあります。仏教の教えを軽んじるつもりは毛頭ないのですが、私の頭の中では、「報恩」という言葉の持つなんとなく抹香臭い響きと医療が結びつきにくかったのです。

 

 大太郎亡き今、この「報恩」にどのような思いが込められていたのかを直接聞くことはかないません。しかし最近、これまではしっくりこなかった「報恩」という言葉が、私の中で日増しになじんできたというか、目の前の霧が晴れるように理解できてきたような気がしているのです。それは、単に私が年を取ったからなのかもしれませんが、理事長として慌ただしく日々を過ごしている中、知らず知らずのうち「報恩」の意味に思いを至らせる機会を得ていたからかもしれません。

 

 まず、寿泉堂の歴史を振り返ったとき、長州出身の初代院長・湯浅為之進が、戊辰戦争終結からさほどの年月も経っていなかった時代に「みちのく」郡山に足を踏み入れ、仇敵とも言うべき関係にあった当地の人々に温かく受け入れられたこと自体が、ほとんど奇蹟に近かったことを思わずにはいられません。郡山へ向かう東北線の車中で偶然隣り合わせた素封家・河口半右衛門氏をはじめ、郡山の皆さまとの幾多の運命的な出会いに恵まれたからこそ寿泉堂は成長できた・・・、 大太郎はおそらく、寿泉堂と郡山のありがたいご縁と、地域に支えていただいたことに対しての「報恩」ということを考えたのではないかと想像しています。

 

 次に、私の元には毎日、患者さんやご家族からたくさんのご意見が寄せられています。それらはどちらかと言えばお叱りの声が多く、私どもの至らない対応などで不愉快な思いをさせてしまったときには、申し訳ない気持ちで一杯になるのですが、ときには身に余るような感謝の言葉を頂戴することもあります。

 最近も、手術を受けた患者さんから次のようなお手紙を頂戴しました。

「・・・手術することに対して不安や恐怖がいっぱいありましたが、○病棟の看護師の皆さん、看護助手の皆さん、医師の皆さんのおかげで入院中の不安は消え去りました。皆さまの活き活きと働いている姿や笑顔のおかげで、安心して入院生活を送ることができました。(中略)○○先生には本当に助けられました。術後のむくみでショックを受けている時に色々と話しかけていただき、自分の思っていることや聞きたいことに耳を傾けていただいたおかげで、安心することができました。(中略)これからも患者一人一人と本気で向き合える、魅力ある医師でいて下さい。私はこの病院で手術をしてもらい良かったと思っています。(後略)」

 この患者さんには、入院していた病棟の看護科長から次のようなハガキを出させていただきました。

「・・・たくさんの感謝の言葉をありがとうございました。私たちも、患者さんの笑顔が見られるととてもうれしく、元気をもらえます。感謝されたり、喜んでもらったりすることが私たちのやりがいになることをあらためて感じています。(後略)」

 医師や看護師ばかりでなく、普段あまり目立たない職種に対してのお褒めをいただくこともあります。次は最近の「寿泉堂ポスト」への投書です。

「感謝の気持ちを!母が退院して半月が経ちますが、入院中にたいへんお世話になったこと、こんな形でペンをとりました。ケースワーカーの○○さんには私ども家族の心のケアまでしていただきました。一流のケースワーカーさんに、感謝の気持ちでいっぱいです。(後略)」

 ・・・こういったご意見を頂戴すると、私まで自分が褒められたかのようにうれしく、誇らしい気分になります。まして名前を挙げてお褒めをいただいた職員たちにとっては、いったいどれほどの励みになることでしょうか。

 

 前理事長・湯浅伸郎は、折にふれて職員にこんな話をしていました。

「英語での『どういたしまして』は、学校では『ユーアーウェルカム』("You're welcome.")と習ったかも知れませんが、ほかにも『イッツ マイプレジャー』("It's my pleasure.")という言い方があります。私はこの表現が好きで、当法人の職員の皆さんには、患者さんから感謝の言葉をいただいたときには『患者さんの喜びこそ私たちの喜びです』と心から言える気持ちを、医療人の原点として持ち続けて欲しいと思っています。」

 

 前理事長の急逝から間もなく丸1年が経とうとしていますが、私は今、「報恩」とは、私たちを励まし、勇気づけ、成長させてくれる患者さん、あるいは地域の方々に対して恩返しをしていくことに違いない、と確信しています。

 今後とも皆さまからのご指導とご支援を切にお願い申し上げる次第です。

(2010.6.15 記)

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