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ごあいさつ

理事長のご挨拶

【 過去の理事長挨拶 】

地域医療を守るための総力戦

 東日本大震災の発生から丸10年を迎えました。ここ一週間ほど、新聞各紙は本県の復興がどこまで進んだかを検証する記事を掲載していますが、毎年この日は、物理的復旧は進んでも、二度と取り戻すことのできないものがあまりに多いことを思い知らされるばかりです。本年2月13日夜に起こった大きな揺れには10年前の光景がフラッシュバックしましたが、あの揺れも東北太平洋沖地震の余震だということに、また驚かされました。今なお深い哀しみの中にある方々に、心よりお見舞いを申し上げます。

 それにしても、震災から10年を迎えるこのとき、世界中が新興感染症のパンデミックの中にあると、いったい誰が想像できたでしょうか。昨年3月に初めて新型コロナウイルスの感染者が確認された福島県内の累計感染者数は3月9日現在で2,144人を数え、国内の累計感染者数は442,947人、死者数は8,419人に達しました。2月末から、国内でもようやく医療従事者を優先したワクチン接種が開始されましたが、2度目の緊急事態宣言が発出された1都3県における新規感染者数は下げ止まりの状態にあり、一方で変異株による感染の拡大傾向が見られるなど、未だパンデミックの収束は見えていません。

 内堀雅雄・福島県知事は3月8日の記者会見で、「本県は政府の分科会が示す6つの指標のうち4つがステージ2(感染漸増相当)にあり、病院や高齢者施設以外での新規感染者数は抑えられている」という見解を示しました。しかし今、郡山市ではこの「病院や高齢者施設」で発生したクラスターの拡大により地域医療が逼迫し、とりわけ救急医療体制が危機的状況にあります。3月8日、県中医療圏最大の中核病院として郡山の市民病院的な役割を担っている太田西ノ内病院が、それまでなんとか維持してきた第三次救急医療(救命救急センターを中心として行う、一刻を争う重症・重篤な患者さんの治療)の提供を当面の間停止すると発表したことは、住民のみならず、地域の医療関係者に大きな衝撃を与えました。

 現在、この非常事態には市内の二次救急医療機関が患者さんの症状に応じて、福島県立医科大学附属病院とも連携しながら対応しており、寿泉堂綜合病院も微力ながら協力しています。二次救急医療機関が本来三次救急医療機関で扱う重症の患者さんに対応するために、比較的軽症の患者さんに対応する一次救急医療機関、症状が安定した患者さんを受け入れる回復期や慢性期の病院、精神科病院等から全面的なバックアップをいただいており、新型コロナウイルスに感染した患者さんの療養先決定や、医療機関同士がスムーズに連携するための連絡・調整には郡山市保健所、郡山医師会の絶大な協力を得ています。実際に患者さんの元に駆けつけ、その状態を判断し速やかに搬送先を決定しなくてはならない救急隊の皆さんには大変なご苦労をおかけしていますが、この郡山市内および郡山周辺部の医療機関、行政機関が総力をあげて取り組んでいる地域医療を守り抜くための奮闘が報われ、一日も早い正常化へとつながるよう、地域の皆さまのご理解とご協力を切に願います。

 10年前のあの日とは異なり、今年の3月11日は柔らかい春の日が差す一日でした。世界が新型コロナウイルスとの闘いに勝利し、穏やかな日々を取り戻すまでもう一踏ん張りであることを信じます。

(2021.3.11 記)

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