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理事長のご挨拶

【 過去の理事長挨拶 】

福島の復興のために私たちができること・すべきこと

 今年も3月11日が巡ってきました。この日が近づいてくると、メディアはこぞって(思い出したかのように)震災の特集を組むことが定着しましたが、あの日からまだ3年しか経っていないにもかかわらず、被災地以外では、震災と原発事故は早くも過去の出来事として風化しつつあるように感じられます。

 「愛の反対は憎しみではなく無関心である」と言ったのはマザー・テレサですが、震災と原発事故によって肉親や親友の命を奪われ、家を失い、地域のつながりも分断され、ふるさとまで追われ・・・文字通り打ちのめされた東日本が再び立ち上がるためには、ひとりでも多くの人が被災地の現状に関心を持ち続けることこそ不可欠である、と強く思うこの頃です。

 

 この1年で、あるいは震災発生からの3年間で、福島の復興は進んだのかと問いかければ、その答えは、同じ福島県民であったとしても様々でしょう。そもそもこの広い県土を「福島」と一括りにして論ずることはできませんし、何をもって「復興」と捉えるのか、その基準はその人が震災で実際に味わった体験や、現在置かれている環境などによってまったく異なるからです。

 福島県の現状や復興についての私の思いは、これまでも何度か記しましたので重ねて論評めいたことは書かないことにしますが、なお問題が山積しているとはいえ、本年4月1日、福島第一原発から20キロ圏内にかかる田村市都路地区が、避難指示区域としてはじめて避難指示解除となることは大きな一歩であると言えるでしょう。郡山市出身である根本匠復興大臣は、復興は被災地が抱える人口減少などの課題を抱えたままの「復旧」であってはならず、「新しい東北」を創造する事業であり、その実現のために官民が協働することが重要であると言っていますが、そのとおりだとも思います。

 

 官民協働といえば、福島県の医療は、主に民間病院が主導する形で発展してきたことに大きな特徴があります。郡山市もそうですが、福島県内は至る所に古くから地域に根ざして医療を行ってきた民間病院が存在し、それらの多くは、当法人も含めて公益法人の認可を受けて、他県であれば国立・県立・市立の病院が担う役割を肩代わりしてきました。平成15年10月現在の厚生労働省統計によると、全国の病院が有する163万床あまりの病床数のうち約6%にあたる93,696床が公益法人立の病院の病床であるのに対し、福島県内では総病床数30,378床のうち9,384床が公益法人の病床で、その比率は30.9%と全国でも断トツの1位になっています。

 住民が安心して暮らすためのインフラとして、医療が充実していることは重要な条件のひとつですが、この点においても、たとえば郡山市では民間病院の相互協力に基づく曜日ごとの救急輪番制度を全国に先駆けて整備し、これが「郡山モデル」として他県に広がっていったなど、常に住民の視点に立って官をリードしてきました。私たち福島県の民間病院は、今こそ先人に倣い、相互の連携をいっそう強化することによって福島の復興を後押ししていかなくてはならないと考えています。

 3月10日の福島民報新聞には、原発事故の影響で一時、大幅に落ち込んだ福島県内への「里帰り出産」の件数が、原発事故前の水準に回復している、という記事が掲載されていました。同紙は、「県産婦人科医会は、県内の放射線の現状について正しい知識が定着してきた上に、時間の経過もあり、県内での出産に対する妊婦や家族の不安が薄らいできていると分析している」と報じていますが、この分析が当たっているとすればとてもうれしいことです。

 寿泉堂綜合病院で取り扱う分娩件数も、平成25年4月から本年2月末までの累計で、前年同期を106件、震災のあった平成23年度の同期を133件上回る743件に達しています。わが国の出生数の減少に歯止めがかからない中、福島県内で生まれる赤ちゃんの数が増え続けているという事実には、たとえそれが元の水準に戻ったということではあるにしても、なぜか勇気づけられませんか。・・・新しい命を授かった子どもたちが、未来の福島を力強く背負っていくことを願わずにはいられません。

 

 最後に、話はがらっと変わるのですが、今年で第9回目となる「ご当地グルメでまちおこしの祭典!B-1グランプリ」は、10月18日(土)、19日(日)の両日、郡山市で開催されます。本来であれば、昨年見事1位に輝いた「浪江焼麺太国(なみえやきそばたいこく)」が、ディフェンディングチャンピオンとして浪江町でライバルを迎え撃つはずなのですが、原発事故の影響で同町での開催は不可能であるため、交通の便の良い郡山が開催場所に選ばれたのです。避難指示などによってバラバラになってしまった「浪江焼麺太国」のメンバーが、ふるさと復興を願って焼き続ける「なみえ焼きそば」の応援に、ぜひ郡山を訪れてください。

(2014.3.13 記)

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